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胃食道逆流症―治療

胃食道逆流症の治療

Ⅰ. 食事・生活習慣に関して

 GERD では、ほとんどの患者さんが食事中や食後に、胸やけなどのつらい症状を感じています。食事に関係して症状がおこりやすい原因には、次の 2 つがあります。

①食べた食品が胃酸の分泌を増やしたり、一過性下部食道括約筋(LES)の弛緩を誘発して逆流をおこす。
②食品そのものが、食道の粘膜を刺激し不快な症状をおこす。

注意すべき食べ物と食べ方
原因①

  • 胃酸の分泌を増加...高脂肪食チョコレートアルコール飲料たばこなど。
  • 一過性 LES 弛緩...暴飲暴食早食い炭酸飲料など。

注意すべき食べ物・・・1.png



















原因② 
食品そのものが食道粘膜を刺激

  • アルコール飲料酢のもの和菓子餡あめ酸度の高い柑橘類トマトスタミナドリンク果物のジュースなど。

注意すべき食べ物30.png



















食事への向き合い方
 GERD のつらい症状を予防するためには、アルコール飲料、たばこ、暴飲暴食、高脂肪食を避けるとともに、酢や和菓子も避けたほうがよいといわれてきました。確かに食事に注意すると症状は軽くなりますが、過度の食事制限は食事の楽しさを奪い、生活の楽しみも少なくなってしまいます。食事制限をどこまで厳格におこなうべきかについては、必ずしも明確な基準はありません。

ただし、GERD といわれた方は、まずは次の点に注意してみましょう。
 ①飲酒と喫煙量を減らす。
 ②高脂肪食、大食、早食いを控える。
 ③上にあげた「注意すべき食べ物」は控えめにする。

 繰り返しになりますが、③に関しては、あまり厳格な食事制限でなくても結構です。すなわち、食べた後「胸やけ」などの症状がつらくて困った食品であれば「その食品は避ける」。これ位で十分です。
 しかし、禁酒禁煙、また高脂肪食・大食・早食いを控えることは、GERD だけではなく一般的な生活習慣病の予防にも共通する事柄です。これらは健康的な生活習慣として考えるほうがよいのかも知れません。
 なお、肥満は GERD の増悪要因です。したがって、肥満にならないための注意は必要です。


Ⅱ. 日常生活上での注意点

 日常生活の場面で食事以外の原因で逆流がおこりやすくなるのは、 次の2 つの要因に分けられます。

①腹圧により胃が圧迫されたとき。
②食道胃接合部が解放状態のときの姿勢の影響。


腹圧上昇の回避
腹圧上昇は胃を圧迫し、逆流がおこりやすくなります。日常動作では、前かがみの姿勢(庭仕事など)大きな声を出すこと(歌や演説など)お腹に力が入る運動(重量挙げなど)腹部をきつく締める服装は逆流の引き金になることがあります。したがって、これらの行動はできるだけ回避しましょう。

骨粗鬆症
骨粗鬆症のために腰が曲がり背中が丸くなった時や妊娠した時は、いずれも腹圧が上昇します。しかし、この状態は回避することはできません。したがって、できるだけ背中をのばすようにしましょう。

肥満
肥満は内臓脂肪のために腹圧を上昇させ逆流につながります。また、生活習慣病という観点からも、肥満は諸悪の根源とされています。できるだけ減量につとめましょう。

注意すべき生活習慣10.png



















Ⅲ. 薬物療法

 GERD の治療は、①逆流を止める、②逆流しても酸を弱める、の2つがあります。内服薬で効果的なものは胃酸の分泌を抑える方法です。なかでも、プロトンポンプ阻害薬(PPI)とよばれる薬がもっとも効果的です。
 このほかに、酸を中和したり、酸による刺激を弱める薬剤を使ったり、逆流をおこりにくくする薬剤を併用することもあります。

制酸薬・アルギン酸

  • 制酸薬は酸を中和することで、逆流しても刺激にならないようにするものです。飲むとすぐに効いてきますが、中和されたものがすぐに胃から出てしまうため効果は持続しません。
  • アルギン酸は水に溶けるとドロっとした液体になります。その性質のため食道粘膜全体を覆い、その上に酸が逆流しても食道を刺激する作用を防ぎます。しかし、何回かものを飲み込むと、覆っていたものがとれてしまい、効果がなくなってしまいます。いずれの薬剤も症状を一時的に改善するための薬剤です。


酸分泌抑制薬
 胃 酸 の 出 方 を 抑 え る 薬 に は プ ロ ト ン ポ ン プ 阻 害 薬(PPI)と H2 受 容 体 拮 抗 薬(H2RA)とがあります。2つの薬剤を比較すると、GERD に対しては PPI のほうが効果的です。ただし、十分に効果を発揮するまでに数日かかることがあります。


PPI(プロトンポンプ阻害剤)
 薬剤の種類によっては、体質的に十分な効果が得られないことがあります。効果が感じられないときは主治医に正しく伝えましょう。

 この薬は胃酸の分泌を抑えることはできても、胃液の食道への逆流自体を抑えることはできません。したがって、薬を中止すると症状や食道炎が容易に再発します。

  • 初期治療

 GERD と診断がついたときの最初の治療を初期治療と呼びます。およそ 8 週間、PPIを服用します。

  • 初期治療後の薬の飲み方

 いったん症状がとれて食道粘膜の傷が治った後に、薬をさらにつづけるかどうかは一定の決まりはありません。症状や食道粘膜の傷が軽い場合には、日常生活の注意・改善を心がけるだけで不快な症状なく過ごすことができることもあります。このような場合には薬は不要です。

 一方、食道粘膜の傷害が高度な場合には、薬をやめると厄介な合併症(食道狭窄、バレット食道、食道腺癌の発生)につながる可能性があります。したがって、一般的には症状がよくなっても、薬を続けて服用することが勧められます。これを維持療法といます。


その他の薬
 消化管運動賦活薬に分類される薬には、噴門の逆流を防ぐ力と食道蠕動運動を増強する作用を持つものがあります。GERD の症状改善のために使うことがありますが、補助的な役割にとどまります。

 

よくある質問
①薬はどれぐらいの期間飲まなければならないのでしょうか?

 GERD 治療の代表的な薬のプロトンポンプ阻害薬は、8 週間でほとんどの患者さんの症状は改善し食道炎も治癒させます。しかし、重症の症状あるいは重症の食道炎がある患者さんでは、薬を中断するとほとんどの人で症状も食道炎も再発してしまいます。そのため、薬を長期間にわたって続ける必要があります。

②薬を長く飲んでも安全ですか?
 薬の安全性は高く、長期に服用する場合も心配はありません。

 PPI は優れた効果を示す一方で、強力に胃酸の分泌を抑えます。したがって、長期使用に際して、その安全性に懸念が示されることもありました。そのため、世界各国で注意深い観察がおこなわれてきました。
 PPI が臨床で使用されるようになって 20年以上が経過しています。その間、長期投与による臨床的に問題となる有害事象(副作用)はほとんど認められませんでした。すなわち、PPI による維持療法の安全性は高いことが確認されています。したがって、長期に服用する場合も主治医とよく相談して、自分に合った薬の飲み方をしていれば安全性の面で心配はありません。


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