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たかが便秘、されど便秘(その2)

痙攣性便秘
1.あなたは便秘ですか?

 1)あなたは便秘ですか? 2)あなたの悩みは便秘と関係があるかもしれません。 3)便秘のタイプにより対処方法が異なります。あなたの便秘どのタイプ? 下の1)2)⇒3)をチェックしてみてください。

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2.あなたの便秘のタイプは?

 上のセルフチェックは先月号と同じです。先月号を含め1)2)3)でどこにもチェックが付かなかった方は、これ以降は読んでいただく必要はありません。


 便秘はその原因により下の3種類に分けられます。チェックが多い所があなたの便秘のタイプです。なかには2種類、3種類の便秘が併発している場合があります。

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A:直腸性便秘(スーパー便秘) 

B:痙攣性便秘(ストレス型便秘、過敏性腸症候群) ⇒ 今回のテーマ

C:弛緩性便秘(普通の便秘)


3.痙攣性便秘とストレス性便秘、過敏性腸症候群

 「ストレスとお腹」というと、通常は下痢をイメージすることが多いと思います。しかし、ストレスで便秘になってしまうこともあります。便を送り出す大腸の蠕動運動が何らかの理由で過剰になり、大腸が痙攣状態になってしまうと便秘になります。大腸が痙攣していると、そこで便が詰まりやすくなるからです。これが日常的に起こっているのが痙攣性便秘です。たまに便が出ても「ウサギの糞」の様に小さくてコロコロと硬い便になっています。

 また、ストレスにより腸がギューと絞り出す様に痙攣する場合は下痢になります。いわゆる、下痢型の過敏性腸症候群の症状です。


4.過敏性腸症候群 

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 通勤電車でトイレに行きたくなり途中下車してトイレに駆け込む。大事な会議や発表の前などストレスのかかる場面で突然お腹が痛くなりトイレに行きたくなる。こんな経験も度重なると、電車に乗る度に、ストレスのかかる度に、お腹が痛くなりトイレに駆け込むようになってきます。そして、ますます心配や苦しみは増大していき、悪循環を形成していきます。このように、過敏性腸症候群は患者さんにとっては大変煩わしく苦痛を伴うものです。しかも、周りはなかなか理解してくれません。

 過敏性腸症候群はレントゲンや内視鏡、便などの検査では異常が認められません。それなのに、腹痛や腹部の張りや不快感、下痢・便秘などの便通異常が続くことが特徴です。腸壁が緊張して激しい収縮運動を起こし腸の一部が狭くなっています。命に係わる病気ではありませんが、日常生活の質(QOL)を著しく低下させます。

過敏性腸症候群セルフチェック

 あなたのお通じに関する悩みは過敏性腸症候群かもしれません。チェックしてみましょう。

 

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過敏性腸症候群の診断基準(RomeⅢ診断基準)

 過敏性腸症候群の医学的な診断は国際的な診断基準(ローマⅢ診断基準)でなされます。器質的な異常がみられず、お腹の張りや痛みが、過去3か月にわたって1か月に3日以上あって、右下の3つの症状のうち2つ以上当てはまる場合、過敏性腸症候群と診断されます。

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女はつまり、男はくだす

 過敏性腸症候群は日頃の便の性状により、便秘が多い「便秘型」、下痢が多い「下痢型」、便秘と下痢を繰り返す「混合型」、どのタイプともいえない「分類不能型」に分けられます。

 男女別では、女性は便秘型または便秘と下痢が交互にくる混合型が多く、男性は下痢型が多い傾向があります。これは男女の体の作り(体質)に関係しているのかもしれません。さらに、男性の方がストレスに晒されやすい環境に置かれていることと関係しているかもしれません。

 また、男性・女性いずれの場合も、若い人に多い傾向があります。そして、40歳を過ぎると男女ともに次第に減少傾向となります。

 ストレスが原因で腸におきる症状には、人により下痢になる場合と便秘になる場合があります。ここでは便秘型と混合型の過敏性腸症候群を痙攣性便秘またはストレス性便秘と呼ぶことにします。

5.過敏性腸症候群と痙攣性便秘/ストレス性便秘

 過敏性腸症候群の主な症状は「過敏性腸症候群セルフチェック」にも記載しています。そのうち、便秘(痙攣性便秘・ストレス性便秘)に関して、もう少し詳しく説明します。

  • 便秘と下痢が交互に起こる

 痙攣性便秘の特徴として便秘と下痢を交互に繰り返すことです。過敏性腸症候群で便秘型の場合はS状結腸に硬い便が詰まっています。そこより奥(口側)は水分が十分に吸収されていない泥状の便です。硬い便で塞がれたS状結腸の便が出た後、泥状の便が出て下痢になります。大げさな表現ですが、ダムが決壊して貯まった水が一気に流れ出るシーンをイメージしてみてください。

  • 食後に下腹部に痛みを感じる

 大腸が過剰に運動をすることで痛みを生じる場合があります。特に食後に多く認められます。また、胃腸が活発に動くタイミングでも起こります。文字通り腸が痙攣するような過剰な動きを行うため、主に下腹部強い痛みを感じます。

  • コロコロ便(細く短く硬い便) 

 腸が引きつったように収縮を繰り返している場合、通常ならば肛門へと進んでいくはずの便が逆戻りして腸の中を行ったり来たりするような状態になってしまいます。 そのため水分が奪われ細く分断されたウサギの糞のようなコロコロした硬い便が排泄されます。また、前述の様に最初は硬いコロコロ便だったのに途中から下痢に近い緩い便というケースも多くあります。

  • 便の量が少ない、残便感がある

 同様の理由から、便が硬くなり分断されていることで、少量しか排泄が出来なかったり、 分断された一部が腸に残っていたりしてスッキリとした排便感は得られません。

  • 便意を感じても排便できない

 腸の蠕動運動自体は強いため便意や腹痛を強く感じます。しかし、いざ排便しようとすると痙攣によって狭められた部分を便が通過するのが困難だとか、 腸自体が痙攣しているため上手く力を入れられない(息めない)とかで排便ができない場合があります。

6.痙攣性便秘の原因

 なぜ、強いストレスでお腹が痛くなったり、下痢や便秘なったりするのでしょうか?

  • 腸は第二の脳

 脳と腸は「脳腸相関」ともよばれる自律神経のネットワークで繋がり、双方がお互いに影響をおよぼし合っています。脳と胃腸は発生過程で同じ「神経管」から生まれ発達した器官です。胃腸は食物から生命の源である栄養を消化吸収し、老廃物を便として処理する大切な役割を担いつつ、自律神経の動きを敏感に感じ取る「考える臓器」なのです。腸は脳の神経構造は似ていて、自律神経の影響を敏感に受けることから「腸は第二の脳」とも呼ばれています。

 気分・感情や体のリズムに大きくかかわる神経伝達物質のひとつ「セロトニン」の90%は腸に存在します。このセロトニンは腸の働きや運動にも大きく関わっています。ストレスが強いとセロトニンが過剰に分泌され、腸の蠕動運動が活発になり過ぎたり痙攣をおこしたりして、腹痛や腹部の不快感、下痢、便秘といった排便障害をおこします。

  • ストレスと自律神経と便秘

 自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経が優位な時は腸の蠕動運動は抑制されます。逆に、副交感神経が優位な時は腸の蠕動運動は活発になります。

 ストレスを受けて緊張状態にある時は交感神経が活発になり、副交感神経神経の働きは低下します。その結果、腸の蠕動運動は抑制され、便を押し出せなくなり便秘になります。また、蠕動運動にも影響して腸が異常に収縮し、痙攣を起こし腹痛をもたらします。

 逆に、副交感神経の働きが強すぎる場合は、蠕動運動が活発になり便の水分が吸収される前に排出されてしまうため下痢となります。

7.痙攣性便秘 解消のポイント

 痙攣性便秘はほとんどの場合はストレスが原因で起こっています。つまり、便秘解消に必要なのはストレスの解消とストレスと上手く付き合う方法を見つけることになります。そうは言っても、実際には困難なものです。ポイントを紹介いたします。

  • ストレスから便秘や腹痛・腹部不快感が生じるという事を理解する

 まず大切なことは、「この便秘や腹痛の原因がストレスからきている」ことを理解することです。腸に器質的な異常がないことを確かめるため専門医の診断を受けることも必要かもしれません。そのうえで、この便秘・下痢、腹痛は「ストレスからきている」「命に係わる病気ではない」と納得することです。

 もちろん、これだけでおおもとの原因であるストレスが軽減する訳ではありません。それでも、自分の不調の原因が分かるだけでも随分と気が楽になることでしょう。

  • 生活習慣の改善

 不規則な生活や睡眠不足もストレスとなります。規則正しい生活を心がこけ、睡眠時間をしっかりと確保するようにしてください。痙攣性便秘になりやすいのは真面目でストレスを受けやすい方という説もあります。ストレスを溜めない生活をと言っても、ストレスにあふれた現代社会では難しいと思います。

 ウォーキング、ラジオ体操、ランニングや汗ばむ程度の軽い運動、入浴(ぬるめの湯にゆっくりつかる半身浴)、お腹のマッサージ(お腹の上下左右4隅)などがお勧めです。また、ストレスを発散できる習慣を無理のない範囲で生活に取り込むようにすることもお勧めです。

  • 薬物療法

 ストレス性便秘の薬物治療は一般的な便秘薬を使った治療と異なります。通常の下剤を使うと逆効果になる場合もあるため注意が必要です

 基本となる薬はポリフル(ポリカルボフィル)という便形状改善剤です。便秘の人が飲んだ場合は食物繊維的な働きをして便の量を増やし、下痢の人が飲んだ場合は便をゲル状に固めて普通の便に近い形にします。

 下痢型には酸化マグネシウムや乳酸菌製剤を追加します。下痢型にはイリボー(ラモセトロン)が有効です。腸内のセロトニンの分泌量を調節して腸の過剰な適度な運動を抑制します。

 大腸の大蠕動を起こして排便を促すセンナや大黄などの成分が入った通常の下剤(刺激性下剤)は、癖(習慣性)になりやすく、かえって痙攣性便秘を悪化させます。どうしても出ない時に限り頓服的に使うようにしましょう。

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