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胃がんの原因 ー ピロリ菌

2013年12月

日本人と胃がん

 胃がんは日本人に多いがんです。最近は、その発生数と死亡数は共に減少傾向です。がんの中では死亡数は第2位(第1位:肺がん)になりましたが、未だに毎年約5万人の命が奪われています。ただし、発生数(新患数)では第1位です。

 

主な部位別 がん新患数と死亡数

主な部位別 がん新患数と死亡数
胃がんの原因

 胃がん発症の原因は塩分の多い食生活や喫煙ピロリ菌感染などがあります。そのうち最大の発症原因はピロリ菌感染だと言われています。
 そして遂に、
平成25年2月からこのピロリ菌感染の診断と治療(除菌)が健康保険で認められました。

 

胃がんの最大の原因-ピロリ菌
ピロリ菌とは
 ピロリ菌とは胃の粘膜に棲みつき多くの病気に関係する細菌です。髭の様な毛(鞭毛)を数本持ち「らせん状」の形をしており、正式な名称はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter Pylori)と言います。「ヘリコhelico」とはらせん状、旋回という意味で、ヘリコプターの「ヘリコ」に相当します。「バクターbacter」とはさお状の細菌(桿菌)、「ピロリpylori」は胃の出口部分の幽門部を意味します。
 すなわち、ピロリ菌とは「胃の幽門部に棲み付く
らせん状の桿菌」と言う意味です。

 

ピロリ菌とは



ピロリ菌と病気
 このピロリ菌は胃の粘膜を障害し胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)や胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こします。長期にわたる感染で胃の粘膜は萎縮をきたし(萎縮性胃炎)、胃がんが発生しやすい粘膜へと変化します。この萎縮性胃炎から胃がん(分化型胃がん)が発生してきます。
 

 また、MALTリンパ腫、胃ポリープや胃もたれ・胸焼け・食欲不振などを引き起こす機能性ディスペプシアなどの原因となります。消化管以外でも特発性血小板減少症や小児の鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹など様々な病気の原因になることが分かっています。
なお、このピロリ菌の発見者であるオーストラリアの病理医ウオーレンと内科医マーシャルは2005年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。

 

ピロリ菌感染から胃がんへの経路

 


ピロリ菌と病気
日本人のピロリ菌感染率
 1990年頃は40歳以上の世代では80%近くの日本人がピロリ菌感染者でした。ただし、20歳未満の若い人の感染率は10%台と高くはありません(*2)。その後、感染率は年々減少してきています。最近では、日本人全体では約半数の6千万人がピロリ菌の感染者とされています。しかし、団塊の世代と言われる60歳以上に限ると約70%がピロリ菌感染者です。

 

日本人のピロリ菌感染率

 

*2)ピロリ菌感染は上下水道などの衛生設備が普及していなかった環境で育った世代に多い。すなわち、汚染された水・食糧から感染したと考えられている。近年は上下水道等の衛生面の整備が進み感染率は減少している。

ピロリ菌と胃がん

 厚生労働省の研究班の調査によると、ピロリ菌感染者はピロリ菌に感染していない人(ピロリ菌非感染者)に比べて約5倍胃がんができやすいことが分かりました。また、過去の感染歴のある人は、ない人に比べ約10倍リスクが高いことも分かってきました。

 

ピロリ菌と胃がん

 

*3)ピロリ菌の持続的な感染がさらに続くと胃粘膜の萎縮が進行し、もはやピロリ菌が住めない環境である腸上皮化生粘膜の範囲が広がってくる。こうなってくるとピロリ菌は陰性となる(感染の既往)。この粘膜は胃がんが最も発生しやすい環境とされる(約10倍)。

ピロリ菌除菌による胃がん抑制効果
 菌感染者のピロリ菌を除去することを除菌といいます。北海道大学の浅香らの研究ではピロリ菌の除菌により胃がんの発生率が全体で1/3に減少することが明らかになってきました(浅香ら ランセット 2008年)。

 

 また、推定ではありますが浅香らによると、除菌による胃がんの抑制効果は胃の萎縮が進んでいない若いうちほど大きく、男女とも30代までに除菌をするとほぼ100%胃がんの予防が可能だそうです。
 40代では男性は93%、女性98%、50代では男性76%、女性92%、60代では男性50%、女性84%予防できると推察されるとのことです。

ピロリ菌除菌による胃がん抑制効果

 

ピロリ菌除菌による胃がん抑制効果

 

年代別ピロリ菌除菌による胃がん抑制効果

 

年代別ピロリ菌除菌による胃がん抑制効果


ピロリ菌感染診断

 平成25年2月より胃内視鏡検査(胃カメラ)を受けた人で慢性胃炎と診断されるとピロリ菌感染診断(*4)を受けることができるようになりました。ピロリ菌の感染が確認されるとピロリ菌の除菌療法を受けることもできます。

 

ピロリ菌感染の検査・除菌

 

*4)ピロリ菌感染診断
  内視鏡を使った検査...迅速ウレアーゼ試験、組織顕鏡法、培養法
  内視鏡を使わない検査...尿素呼気試験、血液・尿検査、糞便検査
  これら検査のうちピロリ菌がいないという診断(非感染診断)には尿素呼気試験が最も正確。

ピロリ菌除菌療法
 ピロリ菌を除去することを除菌といいます。2種類の抗生物質と胃酸の分泌を抑えるPPI(プロトンポンプ阻害剤)の計3種類の薬剤を朝・夜の1日2回、7日間服用します。除菌の成功率はおよそ80%です。

 除菌時の副作用として軟便・下痢、味覚異常、肝機能の異常、アレルギー(発疹や痒み)があります。 アレルギーが出た場合や腹痛や発熱を伴った下痢や血便が出た場合は、すぐに服用を中止して主治医か薬剤師に相談してください。軽い下痢や味覚異常の場合はそのまま内服を続けてかまいません。心配な場合は主治医か薬剤師にご相談ください。

 除菌時に大切なことは、朝・夜1日2回、7日間忘れずに薬を服用することです。薬をきちんと服用しないと除菌の成功率は大幅に落ちてしまします。

 次に大切なことは禁煙です。除菌中の喫煙は除菌率を大きく下げてしまいます。少なくとも除菌中は禁煙するようにしましょう。

 また、2次除菌療法の時には治療期間中はアルコール飲料を飲まないでください(*5)。

 

ピロリ菌除菌の方法・注意点

 

*5)最初に行うのが1次除菌。1次除菌で除菌できなかった場合に行うのを2次除菌といいます。2次除菌に使用されるメトロニダゾール(抗生剤)という薬はアルコールを代謝(分解)する酵素の働きを阻害する(弱める)作用があります。そのため、この薬を服用中にお酒を飲むと腹痛、嘔吐・ほてりなどの症状(いわゆる悪酔い)が現れることがあります。したがって、2次除菌期間中の飲酒は避けてください。

ピロリ菌除菌後の除菌判定
 ピロリ菌除菌の成功率は100%ではありません。ピロリ菌除菌治療が終わって少なくとも4週間以降に検査を行います。その場合は通常は尿素呼気試験という検査です(*4)。胃内視鏡検査は必要ではありません。

除菌後の注意点 
 まず、第一に除菌後に逆流性食道炎が起こる場合があります。
 これは、ピロリ菌感染による胃粘膜の萎縮が除菌により改善すると、低下していた胃酸分泌も改善します。そして、増えた胃酸が食道粘膜を障害するために起こると考えられています。症状が軽い場合が多く、ほとんどは薬で対応できます。

 次に、ピロリ菌除菌による胃がん抑制効果に関することです(←ピロリ菌除菌と胃がん減少効果)。
 ピロリ菌除菌により胃がんの発生はかなり抑えられる訳ですが、萎縮性胃炎がすでに進行してしまっている場合は除菌後でも胃がんになる可能性があります。また、すでに出来てしまっている胃がんの発育を止めることもできません。したがって、除菌後でも胃カメラによる経過観察が大事です。その頻度や期間は主治医とご相談ください。

 

除菌後の注意点


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