院長の独り言

ホーム > 院長の独り言 > 2013年 > 魚の油は体によい

魚の油は体によい

グリーンランド 
 北極圏にあるデンマーク自治州、80%が氷河と万年雪に覆われている世界最大の島。そこの先住民イヌイット。彼らの食事は魚とアザラシなど海に棲む哺乳類の肉などが主で、野菜をほとんど食べません。明らかに高脂肪で、いかにも体に悪そうな食生活です。こんな食生活ではさぞかし心筋梗塞など心血管系の病気が多いと考えられます。

 しかし、驚くべきことに彼らの心筋梗塞の発症率はデンマークの白人と比べて非常に低かったのです。実に約10分の1でした。野菜をあまり摂取せず、しかも高脂肪食を摂取している先住民イヌイット。欧米人と比較して心筋梗塞などの心臓病になる確率がきわめて低かったのです。なぜでしょうか?

EPAとDHA

 その鍵はEPADHAにあります。EPAやDHAはn-3系脂肪酸(エヌ・マイナス・3系と読みます)の代表的な脂肪酸(*1)です。最近、TVなどで「血液をサラサラにする」「頭をよくする」など話題となっています。  EPAやDHAは、特に青魚に多く含まれており、その魚を食べて生息するアザラシの肉にも必然的に多く含まれています。
 すなわち、先住民イヌイットの食事は魚やアザラシの肉など高脂肪食ですが、「血液をサラサラにする」作用のあるn-3系の脂肪酸を多く含む油や脂(*2)を摂っていることになります。その結果、動脈硬化と関係が深い心筋梗塞などの心血管系の病気になりにくくなっている訳です。イヌイットはデンマークの白人と比べて非常に多くのEPAを摂取していました。

イヌイット10.jpg EPA量10.jpg

なぜEPAやDHAは血液をサラサラにするのか?
 EPAやDHAは固まりにくい脂肪酸です。豚や牛などの肉の脂は冷蔵庫の中では白くなり固まっています。一方、鯵・サバなどのは同じ冷蔵庫の中でも白くもならず固くもなっていません。その秘密は魚に多く含まれているn-3系脂肪酸であるEPADHA にあります。

 想像してみてください。もし、魚が豚や牛と同じ様に飽和脂肪酸(*3)を多く含む脂でできていたらどうなるでしょう? 冷たい海で自由に泳ぎまわることができるでしょうか? 冷蔵庫の中の豚や牛の肉と同じ状態、すなわち固くなってしまい泳ぎ回ることなどできません。さらに、生きることもできなくなってしまうに違いありません。

 EPAやDHAはきわめて流動性に富んでおり、氷点下0℃でも固まることはありません。魚(特に青魚)はEPAやDHAをたくさん含んでいて、冷たい海のなかでも決して固まることはないのです。

 EPAやDHAにはこの様な血液サラサラ効果」に加え、悪玉コレステロール・中性脂肪を低下させ善玉コレステロールを上昇させることによる「動脈硬化の予防」があります。また、それ以外にも様々な効果があることが分かってきました。すなわち、アレルギー予防、認知症予防、がん予防などです。

冷蔵庫10.jpg EPA20.jpg

もっと魚を食べよう!
 近年、食の欧米化の影響で日本人の魚離れが進んでいるようです。最近の日本の研究報告でも魚をよく食べる人は「糖尿病」、「心筋梗塞」、「肝臓がん」などの病気の発症率が低いことが明らかになりました。
 魚の中でEPAやDHAを多く含むのはn-3系脂肪酸をつくる海の植物性プランクトン(*)を食べている魚類(イワシ,サンマ,サバ,マグロ,サケ,サワラ,ブリなど)です。これらの魚もっと積極的に摂るようにしたいものです。

さかな30.gif

一口メモ
*1)脂肪酸:中性脂肪はグリセリンと3つの脂肪酸とでできている。脂肪酸の性状により中性脂肪の性質が決まる。n-3系脂肪酸はω3系脂肪酸とも呼ばれる。

*2)油と脂:どちらも「あぶら」の仲間。常温で液体となっているのが油、固まっているのが脂。中性脂肪の成分である脂肪酸により決定される。

*3)飽和脂肪酸:酸化されにくく安定。固まりやすい。

*4)イヌイットの食物連鎖:αリノレン酸を多く含むプランクトンを魚が食べ、魚がEPA・DHAに変換。その魚を、あざらし→イヌイットと繋がる食物連鎖。

EPA+DHAの食物連鎖10.png

  目次  戻る  次へ

CONTENTS